東京ルミナスピラー
「ええ、まあ。もう62ですからね。ですが私は鬼になるつもりはありません。鬼となって生き長らえるというのはひとつの選択肢かもしれませんが……」


「虚構の街で、虚構の生にすがりつく……いつかは覚める夢の中で、自らの存在をどう定義付けるか、難しいですね」


千桜もまた、沼沢達の選択を否定することの難しさに頭を悩ませていた。


もしも、自分が余命いくばくもない状況に陥ったとしたら、鬼になって生きるという判断はしないと言えるだろうか。


「ですから、私は人として最後まで生きるつもりです。この街が終わる前に、私の命が尽きるかもしれません。悔いが残ったとしても、人として死ねるなら構いません。それが『人生』というものです」


そう言い切った大塚の顔は、実に晴れやかだった。


どうにかして大塚を助けたいと願っても、その方法が津堂に鬼の細胞を注入してもらうということでは意味がない。


誰も、何も言えずに、ただ黙るしかなかった。


そんな中で、PBSを開いていた千桜が不思議そうに首を傾げて口を開いた。


「あの……皆さん、ちょっと良いですか? あやせくんをスキャンしてみたんですが……おかしなことになっています」
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