東京ルミナスピラー
〜西軍〜


浅草橋駅のそばのビル。


そこの屋上の縁に腰掛け、バベルの塔をぼんやりと見上げている二人がいた。


一人はポカンと口を開けて、もう一人はブラブラと足を揺らして。


灯を失って以来、ぼんやりすることが多くなった宗司と、それを心配する蘭子の姿がそこにあったのだ。


「宗司。またハーピーが増えた。サハギンもいっぱいいる」


「ああ……そうだな」


バベルの塔の方を指さして、空を飛ぶ鬼と、川にいる鬼のことを蘭子は言っているのだが、宗司はどこを見ているかわからない様子で。


こんな状態でも、こと戦闘となると鬼神の如き強さを発揮していた為、多くの人は特に心配していなかったが、それは献身的に蘭子が支えていたからギリギリで踏みとどまっていたに他ならない。


葵のように、義理とはいえ父親に罵声を浴びせられて殴られていたなら、その心は脆くも崩れ落ちていただろう。


「大丈夫。今度は蘭子が宗司を助ける。だから、心配しないで」


「ああ……」


宗司の腕にしがみつき、頬を寄せる蘭子に呟く宗司。


あの日以来、ずっとこんな感じだった。


「あ、見て。何かキラッと光った。凄い、一直線に……え?」


蘭子が指をさしたのは、川の向こう。


バベルの塔の近くにあるビルの屋上から投げられた何かが、浅草橋駅近くの線路に突き刺さり、そして消えたのだった。
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