東京ルミナスピラー
「全く……あんたがろくな成果を上げないから、私達の立場が危うくなってるんだろ。なんだい……人間に鬼の細胞を注入するとかさ」


「あんた、綺麗な顔をしているのに心は随分と汚れっちまってるんだねぇ。でもま、確かにこれじゃあ、鬼の中から進化した私達の立場がないってもんだ。ほら見なよ、あんな若僧にまで好き勝手言われているじゃないか」


線路を歩きながら、浅草橋駅の天井の上にいる宗司に、扇子を向けたのは爛鬼(らんき)


かつて、西軍で葵や大和達と戦った鬼だ。


「あー、なんかあいつは強そうだね。ちょっと私達の手に負えないかもしれないね」


宗司を見て、残念そうに首を横に振ったのは遊鬼。


丁度この辺りで、過去に篠田と戦闘を繰り広げていた、ロングソードを使う鬼。


その二人の後ろを、黒いマスクの先端から短い鎖が垂れた男が歩く。


「津堂とかいう人間が捕らえた、これまた人間が切り札とはね。私達は鬼のプライドを無くしちまったのかねぇ?」


「文句を言うんじゃないよ。こいつが半殺しにしたやつを私達が食う。それでもっと強くなれるなら、せいぜい利用してやろうじゃないか」


二人の鬼は、その男に前を歩かせて、後ろにつくように歩き始めた。


男は……秋本雄聖。


宗司の父親だった。
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