東京ルミナスピラー
「つまり、幻ってわけね。舐めないでよね! そんなの、最初の位置にいるあんたが本物ってことじゃない!」


沙也香の周りに現れた幻には目もくれず、爛鬼が技を使う前にいた場所にいる、爛鬼に向かって銃弾を放ったが……銃弾は、なんの手応えもなく爛鬼を通り過ぎて行ったのだ。


「残念。この技がそんなチャチな物だと思ってほしくはないね。どれが本物かわからなくなってこそ、技と言えるんだよ」


いつの間にか背後に忍び寄った爛鬼が、広げた扇を振り上げて沙也香の背中を斬り裂く。


腰から肩甲骨にかけて、縦に斬られた沙也香は慌てて前転してその場から逃れようとしたが、今度は右から扇が肩を斬り裂いたのだ。


「チクチクチクチク鬱陶しい! 次はどっち!?」


弾が無くなった……となれば、爛鬼は容赦なく攻めてくるはずと、沙也香は拳銃を構えて警戒した。


そしてその予想通り、今度は正面から爛鬼が現れ、扇を振り下ろした。


その爛鬼の額にピタリと銃口を付けて。


「残念だったね。弾は一発補充されたんだよ」


そう呟くと同時に引き金を引き、銃口から銃弾が放たれた。






が、それも幻。






「残念だったねぇ。私の方が一枚上手だったようだね」


また、背後から傷に重ねるように、攻撃を加えられて沙也香は悲鳴を上げた。
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