東京ルミナスピラー
「葵です。入りますよ」


敵と間違われないように、名乗りながらドアを開けると、受付には吹雪さんが、待合室には拓真が長椅子に横になっていた。


「葵……あんた、もう……」


俺の顔を見るなり、吹雪さんは驚いた様子で椅子から立ち上がって俺に駆け寄る。


「いつまでも落ち込んでいられないですから。それに、まだ終わったわけじゃない。希望はある。そうでしょ?」


唯一と言っていい、小さな希望。


だけど全ての原動力となる大きな力。


胸に手を当てて、吹雪さんに微笑んでみせると、吹雪さんの目から涙が零れ落ちた。


「え、恵梨香……」


そう呟いて俺に手を伸ばし、ギュッと抱き締めたのだ。


苦しい……けど、胸が押し付けられて気持ち良くもある!


「おいおい吹雪さん、やめてやんなよ。それ以上やると葵が興奮しちまうぜ? チェリーボーイに吹雪さんの爆乳は毒だっての」


拓真に言われて、我に返ったかのように俺から離れた吹雪さん。


「ご、ごめんごめん。なんでだろ、葵が恵梨香に見えてさ。つい……」


「ほら、吹雪も抱きついたぞ? ゆいちゃんも蘭子に抱きつくし、もしかしてキスも間違ってないんじゃないのか?」


間違いを正したところなのに、吹雪さんの行動を見て、蘭子はますます混乱しているようだった。
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