儚い桜、物憂げに。
「……ノーチェ?あ、この紙に書かれてあるものですか?」

月夜は、机の上に置かれている1枚の紙を指す。

「そう……ノーチェの意味は……スペイン語で『夜』という意味がある」

「ということは!夜という漢字が入っている……」

愁の言葉を遮り、桐生刑事は月夜を見つめた。月夜は、困った顔をしている。

「……と、もう1つ。イタリア語で『胡桃』という意味もある」

「え……?」

愁の言葉に、桐生刑事は月夜と胡桃を交互に見つめた。

「……これは、ダイイングメッセージだ。どっちを指してると思う?それは、服を見たら1発で分かったよ。そうでしょ?」

愁の視線は、とある人物に向けられる。

「七瀬 胡桃さん……あなたが、颯さんを殺した犯人だ」

愁の言葉に、愁を除いた全員が言葉を失った。それを気にすることなく、愁は口を開く。

「あなたが着ている鮮やかな赤のワンピース。それ、血を隠すために着てるんじゃないの?」

「何を言って……私は、赤色が好きなだけで……」

「じゃあ、その服に付いてる赤黒いシミは何。血の色じゃない?」

「あのさ……血って、鮮やかな赤ってイメージあるんだけど……」

太一の問いかけに、愁は「……そうだね」と言ってから一呼吸置くと口を開いた。
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