儚い桜、物憂げに。
「殺して何が悪い!?そんなに私が悪いっていうのなら……消えて!」

胡桃はポケットからナイフを取り出すと、愁に向かって走り出した。

愁は綺麗で無駄のない動きで、ナイフを奪うとナイフを捨てて胡桃を拘束する。

「桐生刑事。早く胡桃さんを連れてって」

「あぁ……分かった……」

桐生刑事はスーツから手錠を取り出すと、胡桃の腕に手錠をかけた。

胡桃と桐生刑事が消えていった後、愁はため息をつく。

「……僕は、事件を解決することしか出来ない無能な探偵さ」

皆の暗い顔を見た愁は、そう呟いて颯の家を出る。自分の家に向かって歩いていると、後ろから「あの!」と声をかけられた。

「……君は……月夜さん……」

声がした方を向くと、泣きそうな顔した月夜が愁を見つめている。

「僕は、これからどうやって生きていけば良いんでしょう……」

(……月夜くん、両親に捨てられて……それからは颯くんの家でずっと暮らしてたんだっけ……)

さっきのことを思い出しながら、愁は表情を崩すことなく月夜を見つめた。

(……彼のこと、放っておけないなぁ。まだ高校生だし……)

「……君に何もしてあげることは出来ないけど、それでも良いなら家に来なよ……まぁ、それは母さんに聞かないと分からないけど」

その言葉に、月夜は嬉しそうに笑うと何度も頷いた。
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