儚い桜、物憂げに。
「……というわけで、彼を連れて来ました」
家に帰って来た愁は、愁の母親に月夜を紹介する。愁の母親は、呆れた顔を見せた。
「あんたねぇ……」
「迷惑なら良いんです。すぐに出ていきます」
家を出ようとする月夜を、愁の母親は止める。
「事情は分かった。あんた……私の子にならない?」
「え?」
愁の母親の言葉に、月夜は目を見開いた。
「話を聞いてたら、あんたの両親……酷いよ。明日、仕事休みだし、愁も学校が休みだから……私が月夜くんの両親と話をする。とりあえず、今日は家に止まって行くといいよ……あ、自己紹介してなかった……私は、八重桜 遥(はるか)。よろしくね」
愁の母親――遥の言葉に月夜は愁の顔を見つめる。愁は、月夜と目を合わせると首を傾げた。
「……僕の顔に何か付いてる?」
「いや、学校って……」
「僕、高校3年生なんだ」
月夜の呟きに、愁は微笑みながら返す。
「月夜くんは、何歳なの?」
驚いている月夜を構うことなく、遥は問いかけた。
「……僕は、16歳。高校1年生です」
次の日の夜。月夜は、無事に八重桜家の養子として来ること出来た。月夜は、眠れなくて廊下を歩いていた。歩く度に、着慣れない着物が揺れる。
少し廊下を歩いていると、月夜は足を止めた。