30歳のクリスマスソング
 雪だるまをひと通り作り終わると
  さすがに気分悪そうにへたり込む萌。



「歳には勝てないわ」



   飛行機の中で
  無茶飲みしたツケが回ったのだろう。
「気分悪いから先にホテルで寝る」
   とアタシ一人置き去りにしてーーー



   先に消えた女。
    そして取り残された女。



  ホテルは大通り公園から程近い
   少しクラシックな雰囲気を(かも)し出す
    明治初期に建てられたような
  煉瓦(れんが)造りのお洒落なホテル。




 一人にさせられ仕方なく
   時計台の下のカフェで
  お茶しながら好きな動画を見て
    一番奥の真っ赤なソファに腰掛ける。




   アタシの視線の脇の隣の席に座る男。




   見るからに頭悪そうで
     チャラくて
     ガラ悪そうな
    若い子が一人で座った。




   地元の人間なのだろう。
  見るからに寒そうな薄着に
   こっちまで背筋が(こお)りそうな気になる。




< 22 / 68 >

この作品をシェア

pagetop