30歳のクリスマスソング
 男は白いシャツ一枚に
  軽い黄色のダウンジャケットに
   ブラックジーンズ。



   それに対して
 モフモフの白のニットのタートルに
  モコモコのブルーのマフラーを巻き
   カーキ色のダウンコートの女。



 わたしの姿をチラ見しながら
   タバコを吸う男が
  わたしの視界の隅に映り込む。



     ーー何見てんだよ!
       若造のくせに。



  男を視界から消すように反対を向いて
   『北の国から』に入り込もうとした。



 すると誰かがアタシの左のイヤホンを外した。



「何すんのよ!」



 アタシが睨むとその男はあろうことか
   年上のアタシをあからさまに
     馬鹿にしてくる。



「お姉さん、観光客でしょ?」
「邪魔しないでよ。だったら何?」


「『北の国から』懐しいね。好きなの?」
「だったら何よ!」


「それになんでタメ口?」


「アンタ、まだ若いよね?」
「俺、神楽(かぐら)良、二十歳。無職のプー」

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