30歳のクリスマスソング
 薄汚れた蜘蛛(くも)の巣が張ったドアをそーっと開けると、そこに広がっていたのは、生まれて初めて見る、幻想的な橙色(おれんじいろ)荘厳(そうごん)な空間。




     ーーうわ…


その景色の中に未来の自分がウエディングドレス姿で歩く()が見えた気がした。


「何これ?」
「昔からある教会」
「教会なのに…クリスマスなのに」




「誰もいないん?」
「ここ、昼間だけだから」


「ちょっとこっち来て」

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