地味で根暗で電信柱な私だけど、甘いキスをしてくれますか?
 もう取次を介している余裕はないので私は件のマニュアル本を直納してもらうよう山田さんに頼んだ。もちろんバイク便を使ったとしても送料は向こう持ちである。

 ひとまず問題を棚上げして私は他の業務に戻った。まだまだ仕事は山のようにある。のんびりなどできるはずもない。

 プログラミング言語の入門書を探しているお客さんの案内をし終えると階段口から佐藤さんと山田さんが現れた。

 タイプは異なるが二人ともなかなかのイケメンである。

 佐藤さんは爽やかなタイプ。清涼感と清潔感を標準装備しているような好青年だ。

 一方、山田さんはどこか軽薄な感じのする茶髪のお兄さんである。合コンとかにいたら盛り上げてくれそうで……いや、実際彼が主催した飲み会はとても楽しかった。

 二人とも女子に人気があるが佐藤さんには私がいるし山田さんには婚約者がいる。しかもこの婚約者は新宿の老舗書店の店員。版元の営業と書店員の組み合わせってよくあるのかな?
 
 
 
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