溺愛フレグランス
偏りという名の強者
「ただいま…」
私は気だるい気分のまま家へ帰った。
昨夜遅くに朔太郎は我が家に電話を入れたらしい。
遅い時間だったせいか、普段は電話を取らないお父さんが電話に出たと言った。
「何て言ったの?」
私達は別に悪い事をしたわけじゃないのに、何故か後ろめたさを感じ動揺していた。
せっかく気持ちのいい朝なのに。
「俺もその時裸だったから、何かすごく緊張してさ」
「もう、何でズボンくらいはかないのよ~」
朔太郎は私を睨む。
俺に電話をさせたのはどこのどいつだ?と責めるような目をして。
「晴美や市役所の先輩たちと僕の家でちょっと飲み直して、そしたら晴美だけ飲み過ぎてそのままここで寝てますって言った」
私は目を軽く閉じる。
でも、あの状況で朔太郎が考える事と言ったら、きっとこの言い訳が限界だろう。
私は朔太郎の腕の中でまどろみながら、お父さんの困った様子を想像して小さく息を吐いた。
「お父さんは何て?」
「分かった。
朔ちゃん、いつもありがとうって」
私は大きくため息をつく。
この展開は、きっと、結果オーライなのだ。私の両親からすれば、心を掴んでいる朔太郎の言葉は何よりも二人の心に響く。その言葉が私をディスっていようとも。