溺愛フレグランス


そんな朔太郎とのやり取りを思い出しながら、私はそのまま自分の部屋へ向かった。
もう少し寝ていたい。
昨夜の突拍子もない自分の行動に、頭だけがついていっていない。
心も体も朔太郎を求めていた。それは心の隅っこに追いやられていた絶対的な真実。
私の壊れるはずのなかった強固な殻は簡単に破れ、抑えつけられていた感情が湯水のように湧き出した。

その感情の波に頭だけがついていけない。
私はベッドに横になると、カーテンの隙間から燦燦と入ってくる日の光を目を細めて見つめた。
私の押し殺していた感情は、きっと、今のこの日の光だ。
やっと、できた隙間から惜しみもなく周りを照らしている。
そんな事をぼんやりと考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

「晴美ちゃん、帰ってきてるの?」

お母さんの声なのに何だか嫌な予感がしてしまう。

「うん、いいよ、入って」

お母さんは困ったように微笑んでいる。
冴え渡っている私の頭はその微笑みをすぐに理解した。

「晴美ちゃん、山本さんから電話が入ってるの。
昨日から晴美ちゃんの携帯に何度も電話をかけるけど、繋がらなくて心配したみたいよ。出れる?」
「……分かった、じゃ、ここの子機に繋いで」


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