溺愛フレグランス


私は友和さんには見えないけれど、無意識にずっと首を振っていた。
もうこれ以上関わりたくない。
でも、友和さんのすがるような声は、本当に私の事を心配してくれているのが分かる。

「友和さん…
このケガは友和さんのせいじゃない。
私の不注意から起こった事なので、そんなに気にしなくても大丈夫です。
昨夜は、以前から約束していた飲み会があって、結構遅くまで飲んだりしてたので、電話に出れなかったんです。
だから、全然元気なんですよ。
目の治療も近くの総合病院に入っている眼科に行く予定なので、それも大丈夫です」

友和さんはしばらく何も言わない。
電話の中で気まずい沈黙が数秒続いた。
私の左目の傷が急にズキズキと痛み出す。さっきまで全く問題なかったのに…

「晴美ちゃん、実はね…
今、晴美ちゃんの家の近くに居るんだ。
もしよかったら、出てこれないかな。
元気な顔を見たらホッとして帰れると思うから」

私はあまりの驚きに声が出ず、しばらく返事に詰まってしまった。
怖い気持ちが勝ってしまう。


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