溺愛フレグランス
でも、友和さんの気持ちを考えたら、こうしてしまう事もやむを得ないのかもしれない。
私は複雑な心境の中、どう返事をするか迷っていた。
でも、そこに来ているのなら会うしかない。
一昨日の病院での治療費も返したいし。
「分かりました…
じゃ、前に行った駅前のカフェでいいですか?」
友和さんにお金を返すだけ…
そして、今日を最後に会うのはやめる。
私は三十分後に待ち合わせの約束をして、電話を切った。
準備を済ませ玄関に下りた私に、お母さんが声をかけてきた。お母さんは眼帯姿の私を見て、顔をしかめる。
「晴美ちゃん、今日くらいはお出かけはしないで家で休んだ方がいいんじゃない?」
私は靴箱の横にある立ち鏡に自分の姿を映し、萎えたようにため息をつく。
「でも、友和さんが近くに来てるっていうから。
一昨日の手術の費用を返してくるだけ。
すぐに帰ってくるから心配しないで」
そんな二人のやり取りを気にしたお父さんまで車椅子で玄関へやって来た。
「車の運転はダメだぞ。
片目の運転は危険だから」
「大丈夫だよ、駅まで行くだけだから」