溺愛フレグランス


それでもお父さんは頑固に首を縦に振らない。

「タクシーで行きなさい」
「え~」

私が不満そうに口を尖らせていると、お母さんが横から最悪な事を言ってきた。

「朔ちゃんに頼めばいいんじゃない?
朔ちゃんならすぐに着てくれるわよ」
「いい! 大丈夫、タクシーで行くから」

私は慌てて馴染みのタクシー会社に電話を入れる。

「すぐ来れるって。
だから、もう心配しないでいいから」

私はそう言って玄関を出た。
朔太郎にだけはこの状況を知られたくない。
昨夜、セックスをした事によって、朔太郎の保護本能はどの野生動物の雄よりも燃えたぎっているはずから。


< 133 / 234 >

この作品をシェア

pagetop