溺愛フレグランス
祝日のせいで、ユウマルクカフェはいつもより混んでいた。
私は窓際の一番奥の席に座る友和さんを見つけた。
私に背中を向けた状態で座っている友和さんは、私が店に着いた事に気付いていない。
私は少しだけ背筋がぞくっとした。
友和さんに対して抱いている恐怖感が私の中で蘇ってくる。
キャンディちゃんの件も私の実家の電話番号の件も、友和さんに垣間見えるグレーな部分が、私の中の恐怖心をより煽った。
でも、ここへ来て引き返すわけにはいかない。
私はミルクティを買って、友和さんの待つ席へと向かった。
「お待たせしました…」
声が震えてしまう。
私はぎこちなく笑いながら、友和さんの正面に座った。
友和さんは何も言わない。私の痛々しい眼帯をした左目だけをずっと見つめている。
「…痛みは、大丈夫?」
友和さんの苦しみが伝わってくるそんなか細い声だった。
「もう、大丈夫です…
だから、心配しないで…」
友和さんはそれでも心配そうに私を見つめている。
私はそんな友和さんの優しい視線に、人を騙すような邪な悪い部分を感じ取れなかった。
まだ恐怖心はあるけれど、でも、やっぱりあのキャンディちゃんの真相を聞きたい。
「友和さん…
今日は、この間の夜の話の続きを聞きたくて来ました。
キャンディちゃんの事…
ちゃんと詳しく聞かせてください。本当の事を」