溺愛フレグランス
私はロビーを見回しながら、東側の出口から外へ出た。
東側の出口から外へ出ると中庭に繋がっていて、庭が見れるように数台のベンチが置いてある。
私はベンチを一つずつ見て回った。人の目を気にせずに話ができる場所は、多分、ここしかないと思う。
そして、一番建物から離れたベンチに、由良ちゃんと村井さんが座っているのを見つけた。
でも、そこに友和さんはいない。
「由良ちゃん、村井さん」
私は小さな声で二人に声をかけた。
先に由良ちゃんが気付き、そして、村井さんが立ちあがって私を手招きする。
「あの人はもう帰ったわよ」
村井さんのその一言で、一気に体の力が抜ける。
「すみません、迷惑をかけてしまって…」
「いいの、いいの」
村井さんの表情は何故か明るい。
私は隣に座る由良ちゃんに少し首を傾けて見せた。
由良ちゃんは肩をすくめ困ったように微笑んでいる。
すると、腕時計を見た村井さんは、慌てながら早口でこう聞いてきた。
「晴美ちゃん、ごめんね。
晴美ちゃんと山本さんの経緯を聞かせてもらった。
結論から言うと、晴美ちゃんはあの人に全く興味はなくて縁を切りたいと思ってる。
それでいい?」
「は、はい」
私の返事を聞くと、村井さんは大きく息を吐いた。