溺愛フレグランス
「実は、私、キャンプって初めてなんだ…
朔太郎にその事を言うタイミングがなかったから、自分なりに勉強したの。
これじゃダメ? 足りない?」
朔太郎は私の顔を見て、スマホのメモを見て、大きな声で笑った。
そして、笑いながら、そっと、私の肩を抱き寄せる。
「晴美って、本当、可愛いよな…
ここに書いてあるの、もしかして全部持って来た?」
「全部とは言わないけど、ほとんど、かな」
私の肩を抱く朔太郎の腕の力がフッと抜けた。
「分かった。
じゃ、それを戻しに駐車場に行こう。
使わない物ばっかりだからさ」
私はガックリと肩を落とす。
「晴美が調べたのは、きっと、無人島生活に必要な物リストだったんだよ。
無人島はまたの機会ということで」
私はもう笑うしかなかった。
ビニールのバッグの中から、カッパや日曜大工用の工具など必要ない物を全て取り出した。
朔太郎はバッグの中から出てくる無駄な物を見ては大笑いしている。
私も釣られて笑った。
朔太郎と居ると、本当に楽しい。その当たり前を、最近はしみじみと有難いと思った。