溺愛フレグランス
しばらくビルの前で待っていると、私達の前に一台のキャンピングカーが停まった。
「晴美の初めてのキャンプは、このキャンピングカーでのキャンプだよ。
ま、でも、これはキャンプとは言えないけどね」
朔太郎はレンタカー会社の人からキーを預かると、慣れたように荷物を持って中へ入って行く。
私は目の前にある大きなキャンピングカーをぐるりと見て回った。
三十二年の私の人生で、キャンピングカーを生で、それもこんな近くで見るのは初めてだった。外見だけでこんなに興奮しているのに、中へ入ったら、私、どうなってしまうのだろう。
「晴美、早く入って。
ここに長くは停められないからさ」
私は余韻に浸る間もなく、キャンピングカーの中へ入った。ペンションのような内装に感動していると、朔太郎は私の手を引っ張って助手席に座らせる。
「運転中はちゃんとシートベルトをして座ってて。
後ろの部分は、高速のパーキングに停まった時にゆっくり見ればいいよ」
朔太郎はそう言いながら首都高に入っていく。
「どこへ向かってるの?」