溺愛フレグランス
珍しく朔太郎の言葉に元気がない。
「だけど?」
「問題があるとするなら、俺なのかもしれない。
離婚する時、親には、結構、迷惑かけたし、誰よりも俺が結婚に向いてないって思ってる二人だから」
私も少しだけ元気をなくす。
朔太郎にまとわりつく離婚というキーワードが、ここにきて二人の邪魔をし始めた。
私は別にこだわっていないのだけれど。
「でも、大丈夫だよ!
なんだかんだ言って、最後には俺の好きなようにさせてくれるから」
朔太郎は隣に座る私を見て、余裕の笑みを浮かべる。
「大丈夫、大丈夫」
その会話は不安要素を残したまま、それで終わった。
私は疲れているせいで、それ以上に深くその事について考えなかった。
もちろん、根っからのポジティブ思考の朔太郎は、もう、きっと、忘れている。
家までの数時間、二人の時間を満喫する事だけに専念したい。
だって、私達は、やっと、お付き合いを始めたのだから。