溺愛フレグランス
でも、いい事もあった。
朔太郎からもらったエンゲージリングに、サイズのお直し無料のアフターサービスがついていた事。どうやら、そういう事に疎い朔太郎は、完全に忘れていたらしい。
私は家に帰ってから、指輪が入っていた袋や説明書、鑑定書を見てみると、そう大きく書いてあった。
そして、火曜日に出勤した私に、もう一つの大きな困難が待っていた。
早めに職場に着いた私は、毎朝、加湿器の水を変える。
この日もいつも通り、給湯室のシンクで加湿器のタンクを洗っていた。
「晴美ちゃん、今、話せる?」
そう声をかけてきたのは村井さんだった。
私は驚いてタンクを落としそうになる。
「ラインでもよかったんだけど…
でも、目を見て話さないと分からない事もあるなと思って」
私は、きっと、顔が真っ青に違いない。
だって、村井さんの後ろに友和さんの顔が見えてしまうから。
「む、村井さん、おはようございます…」
とりあえず挨拶はする。村井さんの機嫌を損ねるわけにはいかないから。
私は急いでタンクに水を入れ、そして、村井さんに向き合った。