溺愛フレグランス
「時間がないから単刀直入に聞くわね。
晴美ちゃん、朔太郎君と結婚するの?」
私は目が泳ぎ出した。
結婚というワードに、今は、とにかく敏感になっている。
「あ、その…」
「あの人がそう言うのよ。
たぶん、あの人を寄せ付けないための噓だって私は思ってるんだけど。
それでいい?」
それでいい?って言われても…
「晴美ちゃんの結婚するっていう嘘は、あの人を言いくるめるには全然ダメ…
私が言い聞かせたおかげで、以前よりはだいぶ丸くはなったんだけど、でも、ちゃんと晴美ちゃんと話したいってその一点張り」
村井さんとは話す時の友和さんはどんな顔をしているのだろう。
私は緊張するあまりそんなバカな事を考えた。
「晴美ちゃん、最後だと思って、もう一度、あの人に会ってくれない?
そしたら、納得するだろうし、前にも進めると思うの。
もちろん、私同伴だから、何も心配は要らない」
私は返事に困ってしまった。
友和さんに会うのは怖い。でも、朔太郎と結婚するという事が嘘じゃない事も伝えたい。
それで、友和さんが前に進んでくれるのなら。
「…あ、はい、分かりました」