溺愛フレグランス


私は引きつった笑みを浮かべる事しかできなかった。
こんな調子で楽しくご飯なんて食べれない。
あまりの緊張に眩暈までしてきた。
こんな時、以心伝心なのか、朔太郎は私の気持ちをすぐに察してくれる。

「村井さん、今日は、俺達、食事は要りません。
結婚をするのかしないのかだけを伝えに来ました。
俺達は幼なじみで、子供の頃から異常に仲が良くて、その理由は分からないまま大人になりました。
今回、僕がたまたま実家に帰ってきて、そして、晴美がこんな事になって、子供の頃から蓄積された二人の好きという気持ちが、これを機会にあっという間に爆発しました。
結婚は必然の成り行きです。
それに導いてくれた、山本さんには感謝しかないです。
近いうちに籍を入れる予定です。
結婚式はこんなコロナ禍なので、時期を見てと思っています」

朔太郎は息つく暇もなく話し続ける。

「ということですので、
村井さんには仕事の事で晴美から相談があるかと思うので、その時はどうぞよろしくお願いします」
「え、晴美ちゃん、仕事辞めちゃうの?」

私はその事についてはまだ何も考えてなかった。
急に振られて、逆に驚いてしまっている。


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