溺愛フレグランス
「仕事は、どちらでも、晴美の好きなようにすればいいよ。
あの、まだ、この間、ちゃんとプロポーズしたばかりなので、何も細かい事は決まってなくて」
村井さんの視線が私の左手の薬指に向けられているのが分かった。
この期に及んで、朔太郎のドジさ加減にげんなりしてしまう。
「プロポーズされたって事は、指輪は?」
そうやって、確実にチェックを入れるのが村井さんだ。
私は素直にうなだれてしまった。
「サイズが合わなくて…
今、お直しに出してます…」
私の囁くようなか細い声に、村井さんは声を上げて笑った。
「もう、面白過ぎる~~
でも、おめでとう!
心から祝福します、ね?」
ね?と友和さんに同意を求める村井さんの目は、恋する乙女の目だ。
最強のライバルがいなくなって、内心、喜んでいるのが分かる。
私は上目遣いで友和さんをチラ見した。
友和さんは村井さんの事を見つめたまま、首を横に振っている。
「分かった…
もう、いいわよ、帰っても。
私達はもう少しここでくつろいでいくから」
朔太郎はすかさず私の腕を掴む。
さっさと出ようと無言の圧力で私を急かした。
すると、それまで黙っていた友和さんが私を呼び止めた。