溺愛フレグランス


「今、教えてくれないなら、晴美の秘密をおばちゃん達にばらす」
「え?」
「マッチングアプリを正当化する晴美が、おばちゃん達に話せないっておかしくないか?
怪しいものじゃないなら、ちゃんと話せばいいだろ?
話せないなら、俺がちゃんと話してやるよ」

朔太郎のしたり顔は、時が経っても一つも変わらない。それより、もっとパワーアップしている気がする。

「ダメだよ…
お母さん達に心配をかけたくないの。
それだけはやめて」

朔太郎はモフ男を撫でながら、晴美はおかちいですね~とモフ男に話している。そして、モフ男を抱き上げると、私に帰るぞと言って歩き出した。

「朔~、ねえ~、それだけはやめて~」

後ろから付いてくる私を、朔太郎は見向きもしない。モフ男といちゃいちゃじゃれ合って、私の事は完全無視だ。

「ねえ、朔~」

やっと振り向いた朔太郎の顔は、モフ男と同化していた。完全に、いたずらっ子のワンコの顔だ。

「じゃ、俺にその相手の事を教えるしかないな」
「え~」

朔太郎はモフ男を下におろすと、今度は私の肩を抱き寄せた。

「悪いようにはしないからさ。
で、何て名前なの?」

こうやって朔太郎の罠にまんまと引っかかってしまう。
分かっているのに阻止できない私の弱みは、朔太郎のこの可愛らしい笑顔。
弟のような雰囲気に騙されてはいけない。
この私を抱き寄せる力強さは完全に雄の狼で、そのギャップに堕ちてしまった女の子を何人も知っている。
知っているのに抗えないのは、やっぱり朔太郎が魅力的だから。

「ねえ、何て名前なの?」

可愛い朔太郎。たくましい朔太郎。
私達を包み込む幼なじみという魔法が解けた時、二人は一体どうなってしまうのだろう…



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