溺愛フレグランス
「今までの気持ちが勘違いだったとしたら?」
「今までの気持ち?」
私はそう聞き返した。
「今まで幼なじみだとばっかり思ってた俺達の気持ちだよ」
私は頭の中でその意味を考えながら、ソファに腰かけた。
モフ男は私に抱かれているのに、視線は朔太郎を追っている。
「俺達の関係は一般的に言う幼なじみの定義から外れてた。
何でだと思う?」
朔太郎はまだ意地悪な目をしている。
私は朔太郎を見ずに、モフ男を撫でながら首を横に振る。
「幼なじみの関係じゃなかったからだよ。
大げさに言えば、俺達は子供の頃から恋人同志の関係だったって事」
「そんなわけないよ…」
朔太郎はモフ男を奪うために、また私の隣に座る。
「そんなわけないって、俺だってこの間まで思ってた。
でも、気付いちゃったんだな、この歳になって、やっと」
私の体に疲れがどっと押し寄せる。
朔太郎の言っている意味は、多分、ちゃんと分かっている。私自身も、そんな事を何となく考えていたから。
でも、今は、友和さんという違う男性にも惹かれているのは確かで、朔太郎との関係性を突き詰めて考えたくなかった。