溺愛フレグランス


「俺だって、馬鹿じゃないからさ。
こんな状態で、晴美の家にしょっちゅう遊びには来れないよ。
晴美の顔を見たら、また束縛してしまう。
あいつに会うなんて、今でも絶対に嫌だからさ。
だから、もうこの家には来ない。
今日で最後だな…
しばらくしたら東京の方に戻らなきゃいけないし、モフ男やおばちゃん達に会えなくなるのは寂しいけど、しょうがないか…」

私は、今度は寂しさによって心臓が激しく高鳴り出す。確か、朔太郎の結婚の話を聞いた時もこんな感じだったと思い出しながら。

「家には遊びに来てよ…
モフ男もお母さんもお父さんも、急に朔太郎が来なくなったら寂しがるよ」

朔太郎は天井を見上げたまま、大きく息を吐いた。
そして、朔太郎の傍から離れないモフ男の背中を優しく撫でる。

「そうだよな~ モフは晴美より俺の方が大好きだもんな~」

そんな朔太郎の優しい笑顔に私の胸はあり得ないほどにときめき出す。そんな自分の変化に驚いてしまうほど。
無意識の内に、私は朔太郎の傍へ移動した。そして、モフ男の横に座り、ソファに寝転んでいる朔太郎の顔をそっと触る。

「分かったよ…
じゃ、晴美の居ない日に遊びに来る。
あとで仕事のある日を教えといて。
俺はどっちみちしばらくはテレワークだから、昼間にここに顔を出す事はできるから。
俺だってモフ男に会いたいし、な?」


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