溺愛フレグランス
「すごい… このお店、テレビの情報番組で観た事がある。
中々、予約が取れないって言ってた」
一番眺めのいいテーブルに案内されて席についた私は、開口一番そう言った。
「それは以前の話だと思うよ。
今はこんなコロナ禍になって、この店だって相当な打撃を受けてる。
だから、僕達にできる事は、こうやって足を運んで美味しい料理を頂く事。
今日は天気が良くで本当によかった…」
友和さんは目の前に広がる静かな海を見て、優しく微笑んだ。
私は友和さんの人柄を感じつつ、一緒にその海を眺めた。
そこでのひと時は本当に素敵な時間だった。
友和さんの大人の雰囲気は、私の知っている男性とは全然違う。もちろん朔太郎とも。
その雰囲気にのまれてしまっているのか、夢心地で思考が鈍ってしまっているのか、私は友和さんのペースに自分から嵌まっていく。
海辺を歩いたり近くの神社やお寺を散策したり、気が付いたらあっという間に夕方になっていた。
ほとんどの観光地を行きつくしてしまった私達は、友和さんの車の中でこれからの予定を考える。
車を停めている公園の駐車場も、帰路につく車が次から次へその場所を離れていく。