溺愛フレグランス


「いつって、三日前くらいかな…
病気に間違いはないんだけど、病名は、ごめん、分からない。
あと、弔うって、葬式の事?
そ、葬式は」

私は友和さんのしどろもどろな返答に、朔太郎が言っていたあの言葉を思い出した。

あいつ、犬とか飼ってないよ。
飼ってるって噓ついてんだろ…

「友和さん、あの、本当の事教えてもらっていいですか…?
キャンディちゃんって… 本当に居たんですか?」

私はどんなホラー映画よりも怖いと思った。
想像上のペットだったとしても、そんな簡単に死なせる事は許せない。
すごく怖かったけれど、私は友和さんの目を見てその答えを待った。

「い、居たよ… 嘘なんかつかないよ」
「じゃ、キャンディちゃんは何のドックフード食べてました?
トリミングは月に何回くらい?
かかりつけの動物病院の名前は?」

私は意地悪過ぎる。
でも、真実を知りたい。
マッチングアプリでペット好きで繋がった。その根本から全てが偽りになる。

外は夕日が沈み紫色の世界に突入し始める。まるで私の心の中のように。
何も答えられない友和さんに恐怖を感じてしまった私は、咄嗟にドアを開け外へ出た。
もうこの場に留まれない。無言の友和さんを背中に感じ、私は慌てて歩き出す。

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