溺愛フレグランス


「晴美ちゃん、待って」

友和さんもすぐに車から出てきた。人がまばらな駐車場に友和さんの声が響き渡る。
私が早歩きで駐車場から出ようとすると、友和さんの手が私の腕を掴む。

「晴美ちゃん、ごめん。
僕の話を聞いてほしい」

私の心は頑なだった。何に騙されたのか分からない。だって、友和さんの全てが信じられない。
友和さんは力任せに私の腕をひっぱった。そして、私の体を自分の方へ向かせる。

「ごめん…
キャンディの事を言い訳させてほしい。だから、車に戻ろう」

誰かが私達を見ている事には気付いていた。
いい大人がケンカをしてるよと、呆れたようなそんな顔をしている。
でも、今の私にはそんな人の目とかどうでもよかった。

「ごめんなさい… 今日は帰ります」

私のその言葉に反応した友和さんは両腕で私の体を押さえこむ。

「きゃっ」

私はその力から逃れるために、後ろを向こうと思いっきり体をひねった。その反動で私が持っていたショルダーバッグが私の顔に直撃した。
どうやら底面の角が当たったみたいで、一瞬、立ちくらみがして足の力が抜ける。すると、友和さんがすぐに私を抱き寄せた。

< 99 / 234 >

この作品をシェア

pagetop