翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「美緒ちゃーん!いっそげー!」
教室の入口で華世ちゃんが私を見つけて手を振ってくれたから、涙があふれそうになるのを必死でこらえた。
「待ってー、置いてかないでー!」
華世ちゃんに言っているのに、翔ちゃんに言っているような気持ちになる。
翔ちゃん、置いてかないで。
私の知らないとこにいかないで。
こっちに背中を向けて、奥寺さんと手を繋いで遠くに去っていく姿が浮かぶ。
『ごめんね、私のせいで』
奥寺さんの言葉がこだまする。
翔ちゃんが風邪をひいたのは私のせいなんかじゃなかったんだ。
とんだ自惚れだ。
笑わなくちゃと思うのに惨めになる。
笑わなきゃ、華世ちゃんが心配するじゃん。