翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

家までの通いなれた道を歩き出す。
道路はまんべんなくしっとり濡れて、近くの家の塀を追い越してしまった樹木の青々と眩しい葉先からは、さっきまでの雨がしたたっている。


ふぅと一呼吸置いて、翔ちゃんの半歩後ろから思いきって声をかけた。


「翔ちゃんあのさ、ほんとは私の看病してた時から熱あったんでしょ」

「うん」

「やっぱり!」

「うん」

「素直でよろしい」

「うん」

あれ、なんか空返事ひどくない?

「うん?って」

「うん」

なんか翔ちゃんが変。

「ね、数字の1を英語で?」

「うん」

えっ!

「チャーシュー?」

「うん」

「そこはメンでしょ!って……翔ちゃん大丈夫?しっかりして!」


翔ちゃんの様子がおかしいことに気付いたのは、すでに家が見えてきた頃だった。


うつむいたりしないで、翔ちゃんの顔をちゃんと見ていれば気付けたのに。
自分の鈍感さを呪いたい。
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