翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「翔ちゃん、大丈夫だから。
苦しいの?お水飲める?」


身体を離そうと腕を伸ばしてみたけれど
翔ちゃんの力をほどくことはできなかった。


その間に翔ちゃんの熱い腕が腰に回って
もう片方の手が、後頭部を包んだ。


びっくりして、身体が熱くって、
もうどっちの体温なのかよくわからない。


「翔ちゃん、あのっ……間違えてる!」


奥寺さんの迷いのない綺麗な目を思い出して胸が潰されそうになる。
お願いだから私をあの子の代わりにしないで。


それなのに翔ちゃんはそんな気持ちを汲んでくれない。
全然力を緩めてくれない。


抵抗しようとする私の髪に顔を埋めて、
ひとつ大きく息をついた。


「行かないで」


熱くて、小さなつぶやき。


「どこにも行かないで。美緒」
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