翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

ひとりで抱えるには重すぎる。
翔ちゃんの顔もまともに見れなくて、恋愛偏差値の低い私には、どうしていいか全然わからない。


なんであの時奥寺さんじゃなく私の名前を呼んだのか。変に期待して傷つくのもいやだし。


話を聞いてくれたふたりはいつの間にか冷静になっていて、私もやっと深呼吸をした。


校庭から楽しげな声が響くなか、最初に口火を切ったのは岡崎君だった。


「平澤さん、残酷なことを言うけどさ」

「なっ、なに?」

「それに深い意味はないと思うな」

コラー岡崎!
って激昂する華世ちゃんに、岡崎君は特に反応せず続けた。

「宮辺は何も覚えてないわけだし、相手が誰でも同じことをしてたんじゃない?」

まぁ一理ある、と華世ちゃんは頷いている。

「でも責めないであげてよ、男ってそういう生き物なんだって」

「私もそう思う。岡崎の意見を聞いたら尚更許せないよ!」


翔ちゃんて、そんなにいけない男の子なのかな。
私にとってみたら翔ちゃんはなんにも変わらない。近寄りがたい時期もあったし身長はうんと伸びたけど、心は誠実で優しくて正義感のある、昔のまんまだよ。


「そうだね。高熱のせいだけにしちゃいけないんだね。しかもわたし、おでこにチューみたいなことしちゃったし。なんだかんだ何にもされてないのに実際に襲ったのはわたしの方だ……あぁ、なんてことを!」


絶望的になり頭を抱え込んでしまった。


「何言ってんの、でこチューなんて幼稚園児でもやってるんだからそんなの気にしなくていいって」


焼きそばパンをもぐもぐしながらいちご牛乳のパックがへこむくらいの勢いで飲んで、岡崎君はもう注意力散漫なご様子。
< 150 / 347 >

この作品をシェア

pagetop