翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「だってあのふたり付き合ってるんだよね」
言葉にするとこんなにもつらくなるんだ。
「一緒に下校してたもん。相合い傘の関係だもん」
「あたしもそれは耳にしたことあるな」
ほら、華世ちゃんだって知ってるってことは、公認じゃん。
ついでに言えばあの日、翔ちゃんはわざわざ私をなっちゃんに押し付けた。
それだけならまだマシだったのに
彼女の香りを付けて帰ってきたんだった。
ふたりはそういう距離にいられる仲ってことでしょ?
お風呂でしくしく泣いたことを思い出してまた胸の傷が疼きだす。
「それ、勘違いだと思うよ。奥寺さんはずっと彼を諦めきれずにいただけ。でも最近派手にフラれたんだ、クラス全員の前で」
「へー、そうなの?」
平常心の華世ちゃんと違って、喉に声が詰まってしまい一瞬息ができなくなった。
「俺廊下から全部見てたもん。泣きながら教室を飛び出していくところも」
「何それ酷いね、本当の話?」
「嘘なんか言わないよ」
「でも奥寺さん、私には思わせ振りな態度で……」
なかなか動揺が収まらない。
廊下で顔を会わせたときの彼女の全ては私への牽制だったの?強がりだったの?
そうまでして彼女は自分の恋を守ろうとしてたってこと?
あの挑戦的な眼差しの裏に、そんなせつない気持ちを隠してたなんて。
「でもさ、なんでそんなこと岡崎が知ってるのよ?」
ただでさえ現状に付いていけてないのに
華世ちゃんの素朴な疑問がまさかの嵐を巻き起こした。