翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

「いや、もっと早くにこうするべきだったんだ」


「何ひとりでブツブツ言ってんの?」


「とにかく尾崎さんちょっと手伝って?空き教室いこ」


「どういう意味?美緒ちゃんのためにひと肌脱ぐってことだよね?」


岡崎君の手には、最終的にノートとペンとスマホが握られていた。


状況が把握できず、ぼんやりしている私が不安そうに見えたのか、岡崎君はいつものように笑ってくれた。


「平澤さん、ありがとう。あと、ごめん」


「えっ?」


「秘密も、右手も守ってくれたじゃん」


うん、どっちも大事で、大事にしたかった。


「君が守ってくれたこの手で宮辺の信用を取り戻すから」


「手で?」


「そう。身バレしたって退学になったっていいんだ。俺が俺でいられる場所があればそれでいいって気づけたから」


岡崎君の表情には、
微塵の迷いも不安もなかった。

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