翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「うーん、意味わかんないけど岡崎にアイディアがあるんならとりあえずやってみよ」


ふたりは肩を並べて教室を出ていってしまった。


いつの間にか窓の外に小さな雨が降りだしてることに気がついて、岡崎君が無茶なことをしでかさないか急に不安になった。


翔ちゃんが恋しくて、壁紙を眺めて歯をくいしばって泣きたい気持ちと戦った。
でもそのとき、誰かの視線をふいに感じたんだ。

「え、なんで……」


「大丈夫?じゃなさそうだね」


顔をあげると、教室の入り口で奥寺さんがこっちを不安気に見つめていた。涙を見られてしまったかもしれない。慌てて顔をごしごし拭いた。


「もしかして……岡崎君に用事?」


「うーん、用事というか」


うちのクラスに彼女と仲良しの子がいるなんて聞いたこともないし、それなのにはるばるこんな遠くのクラスまでやって来たってことは……やっぱり岡崎君に会いに来たとしか考えられない。


「岡崎君、さっきまでここにいたんだよ。まだその辺にいないかな」


「そんな……探したりしなくていいって」


廊下に飛び出して辺りを見回したけど、それらしい人影はどこにもなかった。


この期に及んで二人の邪魔をしてしまっている自分が不甲斐なくて、泣きたい気持ちを堪えることができなくなった。
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