翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「そうだ電話!岡崎君にかけてみるね」

隠したい涙と震える指のせいで、スマホをうまく扱えない。

「かけなくていいよ」

「だって……」

「それより鳩、出してあげる」

「鳩?」

びっくりして顔を上げたら、目の前で奥寺さんが微笑んでいた。

「見ててね」

彼女はふっくらとした両手を丸めて重ねて、白い子ウサギみたいな形を作って見せた。

何が起こるのか……あっけにとられていると、親指と親指を絡めて8本のすらりとした指が、幸福の白い鳩みたいに羽ばたいた。

「ほら、涙止まった」

手で模した鳩の羽の部分。
白くて細い人差し指と中指で、彼女は私の涙を拭いてくれた。
< 295 / 347 >

この作品をシェア

pagetop