翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「今言ってくれたこと全部、岡崎君に伝えてもらえないかな」
「うーん、機会があったらね」
出来ることなら今すぐ岡崎君をここに引っ張ってきたかった。
「私たちのことより、自分たちのことをもっと考えていいんだよ。宮辺君は泣いたりしないけど、いつも苦しそうな顔してる」
翔ちゃんをそうさせてるのは、私。
「好きな人にはいつも笑っててほしいし、笑わせたいよね。宮辺君も、平澤さんを放っておいて平気なわけないもん」
いつか翔ちゃんにくっついてきたあの可憐な香りがふわりとよぎった。
あの時は嫌だった優しい匂いが、そっと励ましてくれてるみたいに。
彼女、前はあんなに強気だったのにな。
翔ちゃんに私なんかは相応しくないって、そう思ってたはずなのに。
彼女に嫌われてるって、ずっと思ってた。
でも今は違うって、思ってもいいのかな。
「うちのクラスにもまた遊びに来てね」
「奥寺さんも、絶対にまた来て?」
「うん、そうだね」
でも彼女が行ってしまったら、心にぽっかり穴が空いてしまった。
今度彼女がここに来たとき、岡崎君はいるのかな。この学校にいるのかな。
私だけが幸せなんていやだよ。
心細くなるのは、窓の外がいつの間にか、結構な雨模様になっていたせいだ。