翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
バイト最終日。
駅まで江森を送りにいく途中でやっぱり雨は降りだした。
一瞬で蒸し返すような夏の匂いが立ち込めて、無意識に身体が学校の方を向く。
条件反射かよ。
条件反射で悪いかよ。
雨が降ると美緒を迎えに行かなきゃと身体が反応してしまう。
大丈夫。
もうとっくに帰りついてるはず。
ちゃんと男子校を避けたルートで。
風邪だってひかない。
俺なしでも平気なんだ。
でもやけにソワソワしてしまい、江森を置いて引き返そうかと一瞬迷った。
いや、今はバイト中、しかも別料金発生中だ。それだって今日で最後。
明日は美緒の誕生日。
そのためにバイト頑張ったんだし、たとえそれが無意味になったとしたって任された仕事はちゃんと最後までやり遂げる。
そして、ちゃんと現実を受け入れられるように心を整えて、会いに行くんだ。
「ねぇ、先生の傘に入れてよ」
黙って横を歩いていた江森は自分の傘を差さずに俺の隣に滑り込んだ。
「自分の傘があるだろ?だいたいおまえでかいんだし、窮屈じゃん」
「女の子に向かってでかいとか言っちゃダメだよ先生!あーもう、ちょー傷付いた」
「なんでもいいから自分の使え」
「ちぇ」
言われるまま自分の傘を広げるところは、
素直ないい子。
服やメイクなんかでいくら背伸びをしたって、所詮中学生、つまりはガキだもんな。