翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
中学生相手にムキになってしまったことが急に恥ずかしくなって、こめかみをさすりながら反省した。
「え……ちょっ、これ」
でも。その目線の先にそよいでいるものに、次の瞬間釘付けになる。
「ごめんねぇ、もうしまうから願い事は書かないでねぇ」
「えー、サキも書きたかったなぁ。何度もここ通ったのに気付かなかった」
「そりゃ残念だったねぇ。うちの七夕さんは毎年長く飾ってるから、願い事があったらまた来年の今頃おいでねぇ」
おっちゃんと江森が世間話している隙に、
その短冊をそっと外した。
黄色の和紙はもう雨に濡れていて、もう少しで書かれた文字が滲んで読めなくなってしまうところだった。