翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?

普通、こんな人目につく場所に吊るすかよ。願い事の短冊を。
高校生が。
しかもフルネームで。


恥ずかしいんだか嬉しいんだかこそばゆいんだか。ゆっくりと顔が赤くなってくのがわかる。


それは俺のちょうど目線の先で。
ちっちゃくてまるっこい字は、よく知っている美緒の字で。


理想の身長差なんてあるわけないってバカにしてたけど、運命的な身長差ってまさにこのことじゃないの?って胸がいっぱいになったりして。


「江森、走るぞ」


七夕飾りを物色してる江森の腕を引っ張った。

「えー、のんびり行こうよぉ」


「いいから急げ。俺用事あるから」


引っ張るように江森を送って塾に押し込んだ。


「今日のテストの結果分かったら教えろよ、江森なら絶対大丈夫だから」


「うん、頑張ってきまーす!」


江森は子供らしい笑顔になって、俺に手を振った。


このテストでスクーリングのクラス分けが決まる。あの子の学力ならトップクラスはキープできるはず。


その発表が残ってるけど、とりあえずはバイトは終了ってことで。


だから
美緒待ってて。


冷静になってちゃんと話を聞くから。
逃げてばっかじゃ俺らほんとにダメになる。


何が起こっても、美緒のことを好きだという自分の気持ちだけは決して揺らがない。
真実はそれだけで充分。


だって、あの願いを叶えてやれるのって
俺だけだろ?

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