翔ちゃん雨だよ一緒に帰ろ?
「きゃぁ!!」
くるぞ。
驚いたときの野生動物みたいな突進。
いつもはそうだから瞬時にかまえたのに、暗闇の中で俺の両腕は空気を掴んだ。
いつもならそれを抱き止めて、美緒が顔面をどっかに強打するのを阻止するんだけど。
なんで?
「平気か?ケガしてない?」
「翔ちゃん!こわい!電気つけて電気」
声を聞いて安心した。
でも言ってることは相変わらず無茶苦茶。
前にもこんなことあった。
そのときはえっと、俺押し倒されたんだけど。
「大丈夫だよ、すぐ点くから。ほら」
そう言って美緒の携帯を手渡す。
俺ここにいるから、って一応伝えたつもり。
「翔ちゃん……」
美緒が俺の手首をそっと掴んだ。
暗闇のなかで柔らかくて冷たい美緒の手の感触を確認する。