会長。私と恋のゲームをしてください。
「今日、ぼーっとしていたけど、どうしたの?」



夏樹ちゃんが聞いてくる。

私がぼーっとしていたの、気づいていたんだ。



「夕飯のとき、私のこと見ていたでしょ? なんかあったの?」



どうやら夏樹ちゃんには全てお見通しのようで。


隠し事が下手なのか。

夏樹ちゃんが鋭いのか。


……多分両方。


だから私は素直に話すことにした。



「ちなみに会長は、今なにしてるの?」

「お風呂に入っているよー」



安心。

会長のいる前で、『おしゃれしたいんです』なんて言えない。

それが夏樹ちゃんに向けた言葉だとしても。


食器を洗い終わった私は、タオルで手を拭く。

そして夏樹ちゃんに向かって手を合わせた。



「私におしゃれを教えてくださいっ」

「えっ! 私が? なんで?」



驚きと戸惑いを隠しきれていない夏樹ちゃん。


それは当然だと思う。

だって、地味子の私が『おしゃれをしたい』なんて、ふさわしくない言葉。


それでも。

明日、会長の隣を少しでも胸張って歩けたら……、なんて思ってしまう。
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