会長。私と恋のゲームをしてください。
「行かないのか?」



どうやら、手を添えないと動かないみたいだ。



「……行きます」



そろりそろりと、会長の手のひらに私の手のひらを重ねる。

私は恥ずかしさを全力で隠すけれど、多分隠しきれていないと思う。


手が重なった瞬間、会長はベンチから立ち上がった。

私の腰に会長の手が回ったのは一瞬のことだった。

ぐいっと、体が会長の体へと引き寄せられる。


密着する私たち。

会長は、もう片方の手で私の頭を自身の胸元に寄せる。

抱きすくめられるような形の私。

そんな私の耳元で会長はささやいた。



「すげー、きれい」



その言葉は私の心をぎゅっと掴んだ。


『きれい』


その言葉は私の体を熱くする。


会長に、そう言ってもらえるなら。

すこしでも“きれい”と言ってもらえるなら。

今日から、メガネも三つ編みもやめよう。

学校行くときはそうすることしかできないけれど。


そうしたら、少しは会長の隣を笑って歩ける気がする。



「誰にも見せたくない」



そう言って会長は私を離さない。

耳元でささやかれる言葉は、甘くて。

熱を帯びていて。

胸がぎゅっとなった。
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