会長。私と恋のゲームをしてください。
「俺のものになれよ」

「……え?」

「……あ、」



会長がぱっと、私から離れる。

大きな手で、そのきれいな顔を隠しているけれど、その指の隙間から見える頬は、赤く染まっていた。


会長……。

なんで顔が赤いんですか。


そう聞きたかったけど、聞けなかった。


だって。

私の顔も、会長に負けないくらい赤いと思うから。



「今の言葉、だけど、」



会長の手が顔から離れる。

言葉を詰まらせながら話す会長。


その言葉の続きは、なに?


背中に隠した、握り締めている手は、緊張と突き放されたくない怖さで震えていた。


大丈夫。


そう自分に言い聞かせながら会長の言葉を待つ。



「冗談じゃ、ないから」

「え……?」



冗談じゃない?

どういうこと……。


自然と涙腺が緩み始める。


緊張で震えて。

なにかあふれ出しそうなものを必死にこらえて。


目が潤んでくる。
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