会長。私と恋のゲームをしてください。
「す、」

「あーっ!」



突然、街中に響いた叫び声。

静かなこの通りに良く響く声だ。



「春馬くんだ!?」



会長の名前を呼ぶ声がする。

この声って……。



「宮野?」



彩菜先輩……、だよね?


高いヒールの、コツコツとした音。

彩菜先輩が近づいてくるのが分かる。



「春馬くん! ……って。その子、誰」



私を抱きしめる会長の手に力が入る。


彩菜先輩……。

初めて聞いた低い声。

『その子、誰』と、聞こえたとき、背中が凍るような感じがした。



「誰でもよくね?」

「良くないから!」



彩菜先輩の強く発した声が、背中に刺さる。


初めて、彩菜先輩を怖いと思った。

思わず、私は、抱きしめてくれている会長のシャツを握った。


それに反応したのか。

会長は私の名前を呟いた。



「北澤?」



ちょっと!

私の存在を隠してくれるんじゃなかったの!?

だから抱きしめてくれたんじゃないの!?

なんで、私の名前を呟いちゃったの!?
< 138 / 287 >

この作品をシェア

pagetop