会長。私と恋のゲームをしてください。
「きたざ、わ? ……ああ。北澤さん?」



怖い!

怖いって!


静かに怒りを含んだような声。

背中がぞわぞわぁっ、ってした。

最後、鼻で笑われたし!


私は諦めて会長から離れることにした。

涙はすっかり引っ込んでいて、今は恐怖しかない。



「北澤さんだったんだぁ! 春馬くんに抱きついちゃって、どうしたのっ?」



彩菜先輩に睨まれている。

しかも角度的に、私にしか分からないように。



「しかも、イメチェン!? メガネのほうが似合っているのに!」



チクチクと言葉が刺さる。

胸が、痛い。



「メイク、自分でやったの? 私が教えてあげようかぁ?」



嫌味。

嫌味を言われているんだ、私……。

しかも、会長に気づかれるか気づかれないかの、ギリギリのところの嫌味。


耐えろ。

耐えるんだ、私。


ワンピースの柔らかな裾を、ぎゅっと握り締める。

それに気づいたのか、彩菜先輩は。



「そのワンピース、ダサいね。似合ってないよ?」



再び鼻で笑った彩菜先輩。


このワンピースのことだけは悪く言われたくなかった。
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